介護保険法には、人員基準 運営基準 設備基準 という3大基準があって、この基準を満たすことで介護保険請求ができます。介護保険請求部分は、売上全体の約90%になるのが一般的な介護事業所です。
さて、このたびの記事のポイントは、偽造したのは従業員にも関わらず介護事業所が返還しなければならなくなった点、介護事業所が不正請求ではなく請求ミスと認めてしまったために親子に損害賠償を求める資格が失われる可能性がある点です。
当事務所のお客様にも介護事業者がたくさんいらっしゃいます。
この業界は慢性的な人手不足で、計画的な採用ができません。悪く言えば、場当たり的。「欲しい人材が未定義」「今日からでも働いて欲しい」などアルバイト的に正社員を雇用してしまい勝ち。
ポイントの一点目は介護事業者からすれば本当に盲点なんでしょう。一応、雇い入れ時に資格証のコピーなど貰う習慣がある介護事業所もあります。この話をある介護事業所社長にした時、偽造等は一切疑っていないようです。これからは、真偽を確かめる作業も必要であると認識していただきました。
ポイントの二点目は、「請求ミス」として処理したことで親子に損害賠償を求める資格が失われる可能性があるということでした。その逆を考えれば、もし請求ミスでなければ、損害賠償を求める資格が失われる可能性はなかったということでしょうか?この点、法律の専門家に要相談といったところでしょう。
さて、この場合「請求ミス」ではなく「不正請求」として処理された時、介護事業所はどのように扱われるのでしょうか。当然、保険料返還は免れません。また、不正請求による免許取消しの可能性もあります。免許取消しの罰則は結構厳しくて、同社長(親族含む)は二度と介護事業所を経営できなくなります。文中の介護事業所社長は、総合的な判断として「請求ミスを選択」したのかもしれません。
このような事案を生まないように、介護事業所は
・採用時には、資格の真偽を確かめる
・余剰人員を現場に配置する
など一歩進んだマネジメントをする必要があるでしょう。
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以下、ケアマネタイムスから、そのまま転載
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7月9日、青森市内の母娘が青森県警に逮捕された。逮捕されたのはA容疑者(27)と母親のB容疑者(60)、ホームヘルパー2級の研修修了証明書を偽造した偽造有印私文書行使容疑。事件の発端は2年前の2015年1月までさかのぼる。
青森市内で老人介護施設を経営する男性は、介護人材不足に悩んでいた。2015年1月、ハローワークや民間の求人情報誌に求人を出し、面接に現れたのがA容疑者(27)だった。ハキハキとした言葉づかいでしっかりした人材だと男性は喜んでいたという。
男性は面接をして採用することを決め、A容疑者から「ホームヘルパー2級の研修修了証明書のコピー」だという書類を受け取った。雇用から5カ月後、「母親もホームヘルパーの資格を持っている」とA容疑者から母親を紹介された。介護スタッフが不足していたので母親も採用し、母娘は男性が経営する老人介護施設で2年ほど勤務した。
A容疑者(27)と母親のB容疑者(60)が退社して半年ほど経過した2017年9月、施設側が青森市福祉部の担当者に呼び出され、母娘の研修修了証明書が偽造であることが告げられた。
介護報酬はホームヘルパーの資格がなければ請求できない。無資格者であることが判明した以上、母娘が関わって得た介護報酬は返還しなければならない。母娘のサービス実施記録をもとに介護報酬額を算出したところ約1,500万円にのぼった。
青森市の対応
青森市は、ホームヘルパー2級研修修了証明書が偽物であることを見抜けなかった施設側にも責任があるものの、不正の意図はなかったとして「不正請求」ではなく「請求ミス」として処理を行った。請求ミスの場合は、介護保険料の請求額を再計算して「過誤調整」を行ったうえで返還することになっている。不正の意図がないため行政処分などは行われない。
施設を経営する男性は、今回の不正によって被害を被ったとして、損害賠償請求を行う予定だったが、すでに「請求ミス」として処理されており、事業者側のミスも認めて返還する以上、母娘に賠償を求める資格が失われる可能性がある。
事件発覚の経緯
「ホームヘルパー2級研修修了証明書」が偽物であることがわかったのは2017年8月のこと。発端となった施設とは別の施設から提出された母娘の「研修修了証明書」に不自然な点があることに市の担当職員が気づき、内容がデタラメであることが判明した。
青森市によると、偽造された研修修了証明書を使って母娘が勤務した事業所は全部で4カ所。そのうち1カ所の事業所はすでに「過誤調整」として介護報酬を市へ返還している。
青森市役所への電話取材
青森市へ電話取材を行なったところ、事件の概要については報道にある通りだとしながら、以下のような回答が得られた。
「青森市としては、悪意のある介護報酬の請求ではないため、不正請求ではなく請求ミスとして処理し、事業者には自主的に返還してもらうように求めている」